「コンサル倒産ラッシュ」が教えてくれる、士業の生き残り方──補助金も節税テクニックも、信頼には勝てない

「コンサル倒産ラッシュ」が教えてくれる、士業の生き残り方──補助金も節税テクニックも、信頼には勝てない

コンサル業界が大きな転換期を迎えています。

帝国データバンクの調査によれば、2026年1月から5月までの経営コンサルティング業の倒産および休廃業・解散は累計242件に達し、このままのペースで推移すれば年間600件を超える見通しです。前年が過去最多だったにもかかわらず、今年はさらにそれを上回る勢いです。

この数字を見て、私が最初に感じたのは「やっぱりな」という感覚でした。

驚きではありません。むしろ、遅かれ早かれこうなるだろうと思っていたことが、いま現実になっているという印象です。

なぜか。

それは、本質的な価値を提供せず、制度や仕組みに依存しただけのビジネスモデルは、いつか必ず崩壊するからです。

補助金バブルと節税テクニック──”手段”に依存したビジネスの限界

記事によれば、倒産が急増している背景には「補助金申請代行への過度な依存」や「中古車・LEDを用いた節税スキームの指南」といった、実質的な課題解決を提供しないビジネスへの依存があったとされています。

これは、私たち税理士業界にとっても他人事ではありません。

私自身、節税に関しては「効果のある王道の方法を基本とし、怪しさや過度なテクニックには寄らない」という姿勢を貫いています。なぜなら、節税はあくまで手段であって、目的ではないからです。

経営者が本当に求めているのは、節税テクニックではありません。会社を強くすることであり、安心して事業を続けられる環境を手に入れることです。

にもかかわらず、「この制度を使えば税金が減りますよ」「この補助金、取れますよ」という”手段の提案”だけで顧客を集めてきた事業者は、いま大きな岐路に立たされています。

補助金の審査が厳格化され、節税スキームが税務当局に目をつけられ、生成AIが汎用的な業務を代替するようになった今、手段に依存したビジネスモデルは一気に競争力を失いました

これは当然の帰結です。

なぜなら、顧客が本当に求めていたのは「補助金」でも「節税」でもなく、「信頼できる相談相手」だったからです。

AIに代替される業務、されない業務──税理士の本質とは何か

記事では、生成AIの性能向上により、基礎的なデータ収集や分析、資料作成、汎用的な研修コンテンツの提供といった業務がAIに代替されつつあると指摘されています。

これもまた、税理士業界にとって無関係ではありません。

記帳代行や決算書の作成、申告書の作成といった定型業務は、今後ますますAIに置き換えられていくでしょう。実際、そうした流れはすでに始まっています。

しかし、私はAIの台頭を恐れてはいません。

なぜなら、税理士の本質は、数字を処理することではなく、経営者にとって「最初に相談される存在」になることだからです。

税理士の価値は、正確な申告書を作ることではありません。もちろんそれも大切ですが、それ以上に大切なのは、経営者が困ったときに真っ先に声をかけられる存在であることです。

「こんなこと相談していいのかな」と思うような些細なことでも、気軽に話せる。そして、税務の枠を超えて、必要なら他の専門家にもつないで、一緒に解決策を考える。

そういう関係性こそが、税理士の本質的な価値だと私は考えています。

AIがどれだけ賢くなっても、経営者の背中を押すことはできません。リスクを正しく伝えながらも、「それでもやりたいなら、一緒に考えましょう」と寄り添うことは、人間にしかできません。

専門性だけでは選ばれない時代──問われるのは「人としての信頼」

コンサル業界の淘汰が進む中で、もう一つ見逃せないのが「専門性だけでは差別化できない」という現実です。

記事では、「独自の専門性を持たない事業者の競争力は著しく低下した」と指摘されていますが、私はこれを少し違う角度で捉えています。

専門性が不要だと言いたいわけではありません。専門性は当然必要です。しかし、専門性”だけ”では選ばれない時代になったということです。

今の時代、専門知識はインターネットで簡単に手に入ります。AIに質問すれば、それなりの答えが返ってきます。

それでも人は、人に相談します。

なぜか。

それは、思想や理念、人としての信頼感が選ばれる理由になるからです。

「この人なら、私の事業のことを真剣に考えてくれる」 「この人は、数字の向こう側にある経営者の想いを理解してくれる」 「この人になら、安心して任せられる」

そう思ってもらえるかどうか。それが、これからの時代に生き残れるかどうかの分かれ目になります。

顧問契約は、単なる業務契約ではありません。信頼されていることの証明です。

だからこそ、私たちは専門性を磨くと同時に、人として信頼される存在であり続けなければならないのです。

会社を強くする視点──キャッシュ重視の経営支援

コンサル業界の淘汰が進む背景には、「顧客のニーズがリスクマネジメントやM&A、新規事業開拓といったより高度な課題解決へと移行している」という指摘もあります。

これは、税理士業界にとっても示唆に富んでいます。

経営者が求めているのは、もはや「正しい決算書」だけではありません。会社を強くするための具体的な支援です。

私は常々、「会社経営で最も重要なのは利益よりキャッシュである」と考えています。

決算書が黒字でも、手元に現金がなければ会社は潰れます。逆に、多少利益が少なくても、キャッシュがしっかり残っていれば会社は強くなります。

ところが、多くの経営者はこの視点を持っていません。なぜなら、誰もそれを教えてくれないからです。

税理士の仕事は、決算書を作って終わりではありません。その数字の意味を経営者と一緒に読み解き、どうすれば会社が強くなるかを一緒に考えることです。

「この数字を見ると、今月は資金繰りが厳しくなりそうですね。こういう対策はどうでしょうか」 「節税も大事ですが、今は現金を残すことを優先しませんか」

こうした会話ができるかどうか。それが、単なる記帳代行業者と、本当の意味での税理士との違いです。

小さく強く──規模ではなく、関係性で勝負する

倒産が増えているコンサル業界の特徴として、記事では「小規模事業者は特定案件への依存度が高く、顧客の予算見直しやプロジェクト中断の影響を直接受けやすい」と指摘されています。

これは確かにリスクです。しかし、私は「小さいこと」自体が悪いとは思いません。

むしろ、小さく強くあることにこそ価値があると考えています。

大きな組織になれば、どうしても分業化が進み、経営者との距離が遠くなります。担当者がコロコロ変わり、話が通じにくくなります。

一方、小さな事務所であれば、経営者と直接対話し、深い関係性を築くことができます。

大切なのは、規模ではなく関係性の質です。

一人ひとりの顧客と深く向き合い、信頼関係を築き、長く伴走する。そういう関係性を大切にしていれば、景気の波に多少揺れたとしても、簡単には崩れません。

顧問契約を結んでいただいているということは、信頼していただいている証です。その信頼に応え続けることが、私たちの使命だと思っています。

まとめ──これからの時代に求められるのは、”相談の起点”となる存在

コンサル業界の倒産ラッシュは、決して他人事ではありません。
士業も含め、専門家業界全体に突きつけられた問いです。

「あなたは、本当に顧客の課題を解決していますか?」 「あなたは、制度や仕組みに依存せず、人として信頼される存在ですか?」 「あなたは、AIに代替されない価値を提供していますか?」

私たち税理士に求められているのは、相談の起点となる存在であり続けることです。

数字を処理するだけの人ではなく、経営者が困ったときに真っ先に声をかけられる人。税務の枠を超えて、必要なら他の専門家にもつなぎ、一緒に解決策を考える人。
そして、経営者の意思を尊重しながらも、リスクは正しく提示し、背中を押してあげられる人。

そういう存在であり続けることが、これからの時代に生き残る唯一の道だと、私は信じています。
補助金も、節税テクニックも、一時的な武器にはなります。

しかし、最後に残るのは信頼です。
信頼に勝るものはありません。

参考記事経営コンサルの倒産・廃業が2026年上半期に過去最多ペース——AI台頭と補助金バブル崩壊が背景、中小企業への影響は? | MONEYIZM