「申告漏れランキング」に怯えるより、最初から相談してほしい理由

「申告漏れランキング」に怯えるより、最初から相談してほしい理由

国税庁が発表する「申告漏れ業種ランキング」を見るたびに、私は少し複雑な気持ちになります。キャバクラ、眼科医、ホステス、コンサルタント、YouTuber…。こうした業種が毎年並ぶわけですが、私が感じるのは「なぜもっと早く相談してくれなかったのか」という思いです。

税理士という仕事をしていると、税務調査が入ってから駆け込んでくる経営者の方に何度も出会います。その多くは、「自分は大丈夫だと思っていた」「少額だからバレないと思った」「税理士に頼むほどの規模じゃないと思っていた」とおっしゃいます。

でも、本当はそうじゃないんです。税理士の本質は、税務調査の対応をすることではなく、「最初に相談される存在」であることだと私は考えています。申告漏れが起きる前に、一緒に数字を見て、一緒にリスクを確認して、一緒に正しい道を選ぶ。それが税理士の役割です。

今回は、令和6事務年度の申告漏れランキングを題材に、「なぜ申告漏れが起きるのか」「どうすれば防げるのか」、そして「税理士に早めに相談することがなぜ大切なのか」についてお話しします。


ランキングに並ぶ業種は「特別」じゃない

令和6事務年度の申告漏れランキングを見ると、1位はキャバクラで1件当たり4,164万円、2位は眼科医で3,894万円でした。ホステス、コンサルタント、太陽光発電、バー、YouTuberといった業種も上位にランクインしています。

これを見て「うちは飲食業じゃないから関係ない」「医者じゃないから大丈夫」と思う方もいるかもしれません。でも、私はそうは思いません。このランキングに並ぶ業種に共通しているのは、「現金取引が多い」「収入の把握が複雑」「事業と個人の境界が曖昧」といった特徴です。そして、こうした特徴は、実は多くの中小企業や個人事業主に当てはまります。

つまり、このランキングに載っているのは「特別に悪質な業種」ではなく、「構造的に申告漏れが起きやすい業種」なんです。そして、その構造は他の業種にも存在します。


申告漏れが起きる本当の理由

申告漏れが起きる理由は、大きく分けて二つあります。

一つは「意図的な隠蔽」。つまり、わかっていてやっているケースです。現金売上の一部を計上しない、架空の外注費を経費に計上する、名義を変えて収入を分散させる。こうした行為は明らかに不正ですし、重加算税の対象になります。

もう一つは「無知や誤解」です。こちらの方が実は多いのではないかと私は感じています。「副業だから申告しなくていいと思った」「少額だから大丈夫だと思った」「経費になると思って全額計上した」。悪意はないけれど、結果として申告漏れになってしまうケースです。

私が税理士として関わってきた中で感じるのは、後者のケースの多くは「最初から相談してくれていれば防げた」ということです。税務の知識がない方が、ネットの情報や知人のアドバイスを頼りに自己流で申告をして、結果として間違えてしまう。それは本当にもったいないことだと思います。


「現金だからバレない」は通用しない時代

ランキング上位の業種に共通するのは、現金取引が多いことです。キャバクラ、バー、スナック、ホステス、ブリーダー。こうした業種では「現金なら税務署にはわからない」と考える方がいます。

でも、それは大きな誤解です。国税庁はAIを活用して、膨大な申告データ、金融機関情報、SNS情報、業界団体のデータなどを分析しています。同業種との比較で収入の比率が異常な場合、売上と仕入れのバランスがおかしい場合、生活水準と申告所得が合わない場合など、AIが高精度で「おかしい」と判断します。

令和6事務年度の追徴税額は過去最高の1,431億円。これは、調査の精度が上がっている証拠です。「少額だから大丈夫」「現金だからバレない」という時代はすでに終わっています。


眼科医がランクインした理由

今回のランキングで特に注目されたのが、眼科医の2位ランクインです。医療機関は保険診療が中心で、収入は把握されやすいはずなのに、なぜ申告漏れが多いのでしょうか。

答えは「自由診療」にあります。レーシック、美容目的の治療、一部のコンタクトレンズ処方など、保険が適用されない診療は現金収入が多く、計上漏れが発生しやすいのです。国税庁はAIで、保険診療と自由診療の比率を同業他社と比較し、異常値を検知しています。

これは眼科だけの話ではありません。歯科、美容外科、皮膚科など、自由診療の割合が高い医療機関はすべて同じリスクを抱えています。

私がお伝えしたいのは、「自由診療だから申告しなくていい」わけではないということです。むしろ、自由診療が多いからこそ、きちんと記録を残し、正しく申告することが必要です。そして、そのためには税理士と一緒に収支を管理することが大切だと思います。


YouTuberやフリーランスも「事業」です

ランキングにはコンテンツ配信(YouTuber)やシステムエンジニア(ITフリーランス)も入っています。これらの業種で申告漏れが多い理由は、「副業感覚」で収入を得ている方が多いからです。

「会社にバレたくないから申告しない」「少額だから大丈夫」「どうやって申告すればいいかわからない」。こうした理由で申告をしないまま、数年後に税務調査が入って多額の追徴税額を支払うことになるケースが増えています。

私がいつもお伝えしているのは、「収入があれば、それは事業です」ということです。副業であろうと、少額であろうと、収入がある以上は申告が必要です。そして、申告が必要かどうかわからない場合は、まず税理士に相談してください。

税理士に相談するのは「大きくなってから」ではありません。「収入が発生した瞬間」からです。最初から正しい道を選べば、後で困ることはありません。


申告漏れは「リスク」ではなく「現実」

申告漏れが発覚すると、本来の税金に加えて延滞税や加算税が課されます。特に、意図的な隠蔽と判断された場合は重加算税(35〜40%)が適用され、追徴税額は一気に跳ね上がります。令和6事務年度の無申告者への1件当たりの追徴税額は524万円でした。

私が強調したいのは、「税務調査は他人事じゃない」ということです。大企業だけでなく、中小企業も個人事業主も、申告している以上は調査の対象になります。そして、AIの精度が上がっている今、申告漏れはほぼ確実に見つかります。

では、どうすればいいのか。答えは単純です。「最初から正しく申告する」ことです。そして、そのためには税理士の力を借りることが一番確実な方法です。


税理士は「調査対応の専門家」じゃない

税理士の仕事を「税務調査の対応」だと思っている方がいます。もちろん税務調査になればきちんと対応します。でも、私は少し異なった考え方をします。税理士の仕事の本質は、課題解決の起点となり、経営者の最初の相談相手になることだと考えています。

税務調査が入る前に、一緒に数字を見る。売上の計上方法が正しいか確認する。経費の範囲を一緒に考える。按分比率を合理的に決める。節税の方法を提案する。こうしたことを日常的にやっていれば、申告漏れは起きません。

私が大切にしているのは、「経営者に近い立場で数字を見ながら、本人ともきちんと対話する」ことです。決算書は結果であって、絶対視するものではありません。大切なのは、経営の積み重ねをどう記録し、どう申告するかです。

そしてそのプロセスに税理士が最初から関わり信頼を積み重ねることで、申告漏れのリスクはほぼゼロになります。


「小さいから頼まない」は逆です

「うちはまだ小さいから税理士に頼むほどじゃない」とおっしゃる方がいます。でも、私は逆だと思っています。小さいからこそ、最初から税理士に相談すべきです。

事業が小さいうちは、経営者一人で経理も営業も全部やっています。税務の知識がない中で、ネットで調べながら自己流で申告をする。時間もかかりその結果、知らないうちに申告漏れが発生している。そして、事業が大きくなってから税務調査が入り、過去数年分の追徴税額を支払うことになる。

こうした悲劇を何度も見てきました。そして、その多くは「最初から相談してくれていれば防げた」ケースです。

税理士に頼むことは、コストではなく投資です。正しい申告をすることで、将来のリスクを減らし、経営に集中できる環境を作る。それが、税理士と顧問契約を結ぶ意味だと私は考えています。


節税は「王道」でいい

申告漏れが起きる背景には、「税金を減らしたい」という気持ちがあります。それ自体は当然のことですし、私も節税は大切だと思っています。

ただ、私が大切にしているのは「効果のある王道の方法」です。怪しいテクニックや過度な節税には寄りません。経費の範囲を正しく理解し、控除を漏れなく使い、合法的な節税策を提案する。それが税理士の仕事です。

そして、節税よりも大切なのは「キャッシュを残すこと」です。会社経営で最も重要なのは利益よりキャッシュです。税金を払ってでも現金を残す。それが会社を強くする視点だと私は考えています。


まとめ:最初に相談してほしい

申告漏れランキングを見て感じるのは、「なぜもっと早く相談してくれなかったのか」という思いです。

税理士は、税務調査が入ってから頼るものではありません。収入が発生した瞬間、事業を始めた瞬間、副業を始めた瞬間。その時から相談してください。

税理士の本質は、課題解決の起点となり、必要なら自分以外の専門家もつないで解決策を示すことです。そして、経営者に近い立場で数字を見ながら、本人ともきちんと対話することです。

顧問契約は、単なる業務契約ではなく、信頼されていることの証明です。だからこそ、私は「最初に相談される存在」でありたいと思っています。

もし、あなたが「これは申告すべきかな?」「この経費は大丈夫かな?」と少しでも不安に思ったら、その瞬間が相談のタイミングです。申告漏れが起きてから後悔するより、今、一緒に正しい道を選びましょう。

参考記事
申告漏れ業種ランキング【2026年最新版】税務調査で指摘されやすい業種の原因と対策を解説 | MONEYIZM