飲食料品の消費税減税、その裏で飲食店経営者が直面する”見えない不公平”

飲食料品の消費税減税、その裏で飲食店経営者が直面する”見えない不公平”

高市首相が飲食料品の消費税を令和9年4月から1%に引き下げると表明しました。

以下が大まかな今後の流れです。
①まずは、「全所得階層」に負担軽減が及ぶ「飲食料品の消費税率」1%への引下げを、令和9年4月より2年間先行させる。
 ②その後、「税・社会保険料」の負担に苦しむ、真に支援の必要な「中所得」・「低所得」の方の負担を集中的に軽減できる「所得に連動したきめ細かな給付」を、令和11年4月から「本格導入」することに合わせて、
 ③「飲食料品の消費税率」は元の税率(8%)に戻して行く。
 ④その上で、「所得に連動したきめ細かな給付」の「本格導入」までの間、支援の「十分性」を確保しつつ、「中所得」・「低所得」の方に手厚く対応するとともに、消費税率を元に戻して行く際に合わせて「本格導入」される「給付制度」の予見可能性を高めるという観点からも、「飲食料品に係る消費税」1%の範囲内で、令和9年6月以降、「所得に連動したきめ細かな給付」を「先行導入」する。

この減税案は国民の生活負担を軽減するという大義名分のもとで進められていますが、私が経営者の方々と話していて気になるのは、外食産業への手当ての議論がこれからということです。

飲食料品が減税されるとき、スーパーで買う食材は安くなります。しかし、飲食店で提供される料理は軽減税率の対象外、つまり消費税10%のままとなる可能性が高いのです。これは単なる税率の違いではありません。飲食店の経営者にとっては、売上が下がる可能性を意味します。そして、その影響に対して何も手当てがないまま制度だけが進んでしまう。私はここに大きな違和感を覚えています。

減税の恩恵を受けない人たちがいる

私は税理士として、多くの飲食店経営者とお付き合いしてきました。飲食店というのは、薄利多売のビジネスモデルが多く、材料費も人件費も高騰する中でギリギリの利益で回っている店がほとんどです。そんな中、飲食料品の消費税が1%に下がると、お客さんは「家で食べたほうが安い」と考えるようになります。

スーパーで買う食材は1%、外食は10%。この差は小さくありません。消費者の行動は確実に変わります。結果として、飲食店の来客数は減少し、売上は落ちる。これは誰が見ても予測できる流れです。

私が「減税っていいことだよね」で思考を止めないのは、こういう現場の経営者の顔が浮かぶからです。減税が正義だと言われても、その裏で誰かが苦しむのであれば、それは本当に公平な政策なのでしょうか。

税制は”誰が恩恵を受けて誰が負担するか”の設計図である

税理士の仕事をしていると、税制というのは中立ではないことを痛感します。本来は中立でなければなりませんが税制は、社会のどこにお金を流すか、どこから吸い上げるかを決める設計図です。ある人にとっての減税は、別の誰かにとっての売上減少につながる。そして、今回の飲食料品減税は、飲食店経営者にとっては明確に「負担する側」に立たされる制度設計になっています。

私が経営者の方と話すとき、いつも大切にしているのは「数字の裏にある現実を見る」ということです。決算書に載っている売上や利益は、単なる数字ではありません。その裏には、仕入先との交渉があり、従業員の給与があり、家賃の支払いがあり、経営者の不安があります。飲食料品の消費税が減税されることで、仕入額が下がるが、飲食店の売上が仮に10%下がったとしたら、その影響は経営者の生活を直撃します。

だからこそ、私は税理士として、こういう制度が発表されたときに「これ、うちのクライアントにどう影響するかな」と考えるのです。そして、もしマイナスの影響があるのなら、それをきちんと経営者に伝え、対策を一緒に考える。それが税理士の役割だと思っています。

飲食店への手当てはあるのか?

2026年6月26日に、財務省との勉強会に参加した際、飲食店への手当ての議論は全くされていない状態であると財務省が言っていました。高市首相の表明でも飲食店への手当てはまだこれから、という印象です。おそらく、コロナのときみたいに借入金でお茶を濁すと思われます。なぜなら、こういう制度設計の場では「全体の公平性」が優先され、個別業種への影響は後回しにされることが多いからです。

しかし、私は税理士として、こういう「見えない不公平」を放置してはいけないと思っています。飲食店の経営者は声を上げにくい立場にいます。日々の営業に追われ、税制の議論に参加する時間も余裕もない。だからこそ、私たち税理士が代わりに声を上げなければなりません。

もし飲食店に対する手当てがないのであれば、それは制度として不完全です。減税によって恩恵を受ける人がいる一方で、負担をする人がいる。その損を埋める仕組みがなければ、それは公平な税制とは言えません。

経営者に必要なのは、減税ではなくキャッシュを残す知恵

私が経営者と話すとき、いつも言うのは「会社を強くするのはキャッシュだ」ということです。減税されても、そのお金がキャッシュとして手元に残らなければ意味がありません。逆に、増税されても、キャッシュをきちんと残す経営をしていれば会社は強くなります。

今回の飲食料品減税も同じです。減税によって恩恵を受ける人もいれば、負担をする人もいる。だからこそ、経営者は減税に期待するのではなく、自分の会社のキャッシュフローをどう守るかを考えるべきです。

私が飲食店の経営者と話すときは、こう伝えます。「減税がどうなるかはコントロールできません。でも、仕入れを見直すこと、メニューの価格設定を見直すこと、無駄なコストを削ることは、今すぐできます。そこに集中しましょう」と。

税制に振り回されるのではなく、自分がコントロールできることに集中する。これが経営の基本です。そして、その基本を支えるのが税理士の役割だと、私は思っています。

税理士として、経営者の不安に寄り添う

私は税理士として、経営者の不安に寄り添うことを大切にしています。今回の飲食料品減税についても、「これ、うちの店にどう影響しますか?」と聞かれたら、きちんと数字で説明します。「もし売上が10%下がったら、利益はこれくらい減りますよね。だから、今のうちにコストを見直しましょう」と。

税理士の仕事は、決算書を作るだけではありません。経営者が安心して経営に集中できるように、税制の変化を読み解き、リスクを伝え、対策を一緒に考える。それが本当の意味での税理士の価値だと思っています。

今回の飲食店への手当てがどうなるかはまだわかりません。でも、手当てが借入金のみであったとしても、飲食店の経営者が困らないように、私は全力でサポートします。それが税理士としての使命だと、私は信じています。

まとめ:見えない不公平を見逃さない

飲食料品の消費税減税は、一見すると国民に優しい政策に見えます。しかし、その裏で飲食店経営者が直面する不公平は、なかなか表に出てきません。私は税理士として、こういう「見えない不公平」を見逃さず、経営者の声を代弁していきたいと思っています。

税制は誰かが恩恵を受けて、誰かが負担をする設計図です。だからこそ、私たちは冷静に、現実を見つめなければなりません。そして、経営者が困らないように、今できることを一緒に考えていく。それが税理士の役割だと、私は信じています。

参考HP→https://www.kantei.go.jp/jp/105/statement/2026/0730kaiken.html