確実に到達できる。働きながら税理士を目指す人のための「3科目+大学院」という現実的な選択肢

確実に到達できる。働きながら税理士を目指す人のための「3科目+大学院」という現実的な選択肢

はじめに:高確率で税理士になりたい方へ

「税理士になりたい」と心の中で思いながら、毎日忙しく働いている社会人の方は、実はかなり多いと思います。でも、そのほとんどの人が「5科目も合格しないといけないなんて、今の生活では無理だ」という理由で、最初の一歩を踏み出せずにいます。

家庭があって、仕事もフルタイムで、副業もやっている。そんな中で税理士試験に挑むなんて、現実的じゃないように思えるかもしれません。実際、私もかつてはそう思っていました。

でも、実は多くの人が知らない、もっと現実的なルートがあります。それが「3科目の合格+大学院」という道です。

私は20代で証券会社を退職し、簿記講師として働いた後、税理士事務所で実務経験を積みながら、この「3科目+大学院ルート」で税理士になりました。今ではスタートアップ企業や副業プレイヤーの方々の税務顧問として活動しながら、双子の男の子と姉妹、合計4人の子どもたちの育児にも全力で向き合っています。

この記事では、私と同じように「忙しいけれど、本気で税理士を目指したい」と考えている社会人の方に向けて、大学院ルートの全体像から具体的な科目選択、6年間のスケジュール、かかる時間とお金、そして注意すべきポイントまで、できるだけ現実的に、わかりやすくお伝えしていきます。

大学院ルートとは何か?全体像を理解する

税理士試験は本来、5科目すべてに合格する必要があります。これは誰もが知っている「王道ルート」です。

しかし、税理士法には別のルートも用意されています。それが「大学院における税法研究による科目免除制度」です。

具体的には、大学院で税法に関する研究を行い、修士論文を提出することで、最大で3科目まで免除を受けることができるんです。

つまり、こういうことです。

  • 簿記論
  • 財務諸表論
  • 税法科目1つ

この3科目だけに合格すれば、残りの税法2科目(所得税法、法人税法、相続税法など)は、大学院での研究によって免除申請ができます。

この制度の最大のメリットは何かというと、「働きながらでも十分に狙える」という点です。5科目すべてを受験するとなると、膨大な時間と労力がかかります。正直なところ、フルタイムで働きながら5科目合格を目指すのは、相当な覚悟と環境が必要です。

しかし、3科目だけであれば、計画的に学習を進めることで、仕事と両立しながらでも確実に到達できる目標になります。

さらに、大学院を修了することで修士号も取得できます。これは税理士としてのキャリアにおいても、決して無駄にならない資格です。

この大学院ルートの全体像を整理すると、こうなります。

  • 学習時間は約半分(通常の5科目ルートが約3,000時間に対して、3科目ルートは約1,500時間)
  • 働きながらでも十分に狙える時間配分が可能
  • 修士号という学位も同時に得られる
  • 6年程度の計画的なスケジュールで税理士登録が可能

つまり、フルタイム勤務でも、しっかりと時間管理さえできれば、現実的に実現可能な選択肢なんです。

この3科目が鉄板!おすすめの試験科目セット

大学院ルートで必要なのは、先ほども述べた通り「簿記論」「財務諸表論」「税法科目1つ」の合計3科目です。

この中で、多くの人が悩むのが「どの税法科目を選ぶか」という点だと思います。

税法科目には、法人税法、所得税法、相続税法、消費税法、酒税法、国税徴収法など、さまざまな選択肢があります。どれも一長一短で、どれを選ぶべきか迷うのは当然です。

しかし、私が最もおすすめしたいのは「消費税法」です。

① 簿記論

簿記論は計算中心の科目です。理論の暗記がほとんど必要なく、パターン学習によって得点が安定しやすいという特徴があります。

初学者にとっても比較的取り組みやすく、「まず1科目合格して自信をつけたい」という人にも向いています。

また、簿記論で学ぶ知識は、税理士としての実務においても絶対に必要な基礎となります。ここをしっかり固めることが、その後の学習すべてに良い影響を与えます。

② 財務諸表論

財務諸表論は、理論(記述式)と計算のミックス型の科目です。一見すると簿記論よりも難しそうに思えるかもしれませんが、実は簿記論と内容がかなり重なっています。

具体的には、学習内容の約7割が共通しているといわれています。

つまり、簿記論と財務諸表論をセットで学ぶことで、理解が深まり、学習効率が大幅に向上します。片方を勉強することが、そのままもう片方の対策にもなるわけです。

この2科目をセットで受験するのは、大学院ルートを選ぶ人にとって、ほぼ定石といっていいでしょう。

③ 消費税法(おすすめの選択科目)

そして、税法科目として私が強くおすすめするのが「消費税法」です。

消費税法をおすすめする理由は、大きく分けて3つあります。

1. 学習範囲がコンパクト

法人税法や所得税法と比較すると、消費税法は範囲が比較的コンパクトです。受験専門学校の講義も週1回のところがほとんどです。

これは「まず1科目だけでも合格したい」という社会人にとって、非常に取り組みやすい要素です。

2. 実務で使う機会が圧倒的に多い

消費税は、ほぼすべての事業者に関係する税金です。インボイス制度の導入もあり、今後ますます実務での重要性が高まっていくことは間違いありません。

副業をしている個人事業主や、スタートアップ企業の経営者にとって、消費税の知識は必須です。つまり、勉強したことがそのまま実務に直結します。

3. 初学者でも合格を狙いやすい

消費税法は、税法科目の中でも比較的初学者向けといわれています。理論暗記の負担が少なく、計算パターンを身につければ得点が安定しやすいため、働きながらでも十分に合格圏内を目指せます。

この3科目を選ぶメリットをまとめると

  • 簿記論と財務諸表論は内容が7割重複 → 学習効率が非常に高い
  • 消費税法は週1講義で範囲もコンパクト → 社会人でも取り組みやすい
  • 消費税法は実務でも頻出 → 将来のキャリアに直結する

この組み合わせなら、働きながらでも着実に合格を狙うことができます。

どれくらい時短&コストカットできるのか?

ここで気になるのが、「実際にどれくらいの時間とお金がかかるのか」という現実的な部分だと思います。

時間の比較

まず、学習時間を比較してみましょう。

通常ルート(5科目すべて受験)

1科目あたり約600〜800時間 × 5科目 = 約3,000〜4,000時間

仮に1日2時間勉強したとして、約4〜5年かかる計算です。

大学院ルート(3科目受験)

1科目あたり約500〜700時間 × 3科目 = 約1,500〜2,100時間

同じく1日2時間勉強したとして、約2〜3年で到達可能です。

つまり、試験勉強に必要な時間は約半分になります。

これは非常に大きなメリットです。フルタイム勤務をしながら、家庭や副業と両立させる上で、この「時短効果」は計り知れない価値があります。

お金の比較

次に、費用面を見てみましょう。

通常ルート(専門学校で5科目受講)

1科目あたり約24万円 × 5科目 = 約120万円

大学院ルート(3科目受講+大学院学費)

  • 専門学校費用:約24万円 × 3科目 = 約72万円
  • 大学院学費= 約200〜250万円
  • 合計:約272万円〜322万円

一見すると、大学院ルートの方が高く見えます。しかし、これには「修士号の取得」「研究を通じた専門性の深化」「大学院での人脈形成」「税法科目不合格による時間のロス」といった、金額以上の価値が含まれています。

また、大学院によっては奨学金や教育訓練給付金制度を利用できる場合もあります。これらをうまく活用すれば、実質的な負担額はさらに抑えることができます。

長期的なキャリア形成という視点で見れば、大学院ルートは十分にペイできる投資だと私は考えています。

勉強の進め方:理想の6年スケジュール

それでは、具体的にどのようなスケジュールで進めていけばいいのか、現実的な6年プランをご紹介します。

1年目(9月スタート)

  • 簿記論・財務諸表論の学習を同時スタート
  • 平日は1〜2時間、土日は3〜4時間のペースでコツコツ進める
  • 基礎固めに集中し、焦らず着実に理解を深める

この時期は「習慣づくり」が最も大切です。無理なく続けられるペースを見つけることが、長期戦を乗り切る鍵になります。

2年目(8月受験)

  • 簿記論・財務諸表論を受験
  • 受験後の9月から、消費税法の学習を開始
  • 12月:簿記論・財務諸表論の合否確認

この段階で2科目とも合格できれば理想的ですが、仮に1科目だけでも合格していれば、十分に順調です。焦らず、次に進みましょう。

3年目

  • 消費税法の学習に集中(必要に応じて簿記論・財務諸表論の再受験も並行)
  • 8月:消費税法を受験
  • 12月:合格発表

ここで3科目すべてに合格できれば、次のステップである大学院進学に進めます。

4年目(4月)

  • 大学院に入学(夜間コース、土日開講、オンライン授業など、働きながら通える形態を選ぶ)
  • 論文テーマの決定と文献リサーチを開始
  • 指導教員との関係構築

大学院では、自分の関心のある税法テーマについて深く研究できます。この時期から、少しずつ論文の土台を作っていくことが重要です。

5年目

  • 論文執筆と研究に集中
  • 指導教員と定期的に面談しながら、内容をブラッシュアップ
  • 中間発表や研究会での報告を通じて、論理を磨く

この1年間は、研究者としての視点を養う貴重な時間です。税法を「ただ覚える」のではなく、「なぜそうなっているのか」を深く考える経験は、税理士としての視野を大きく広げてくれます。

6年目

  • 3月:大学院を修了し、修士論文を提出(免除申請)
  • 8月:免除認定の通知が届く
  • 実務経験の要件(2年以上)を満たしていることを確認し、税理士登録の手続きを開始
  • 11月:税理士登録完了!

ここまでくれば、晴れて税理士としてのキャリアがスタートします。

注意点とその対策

大学院ルートは確かに現実的で魅力的な選択肢ですが、気をつけるべきポイントもあります。

大学院選びは慎重に

すべての大学院が科目免除の対象になるわけではありません。事前に、以下の点をしっかり確認しましょう。

  • 税法に関する研究ができるか
  • 過去に免除実績があるか
  • 指導教員の専門分野は自分の関心に合っているか
  • 働きながら通える環境か(夜間・土日・オンライン対応など)

入学してから「思っていたのと違った」となると、時間もお金も無駄になってしまいます。説明会や個別相談を活用し、納得できるまで情報を集めることが大切です。

論文は前倒しで進める

「最後の半年で一気に書けばいいや」という考えは、非常に危険です。

論文執筆には想像以上に時間がかかります。テーマ設定、先行研究の整理、データ収集、論理構成、推敲…すべてのプロセスに、丁寧な時間が必要です。

できれば1年目のうちに文献収集や構成の骨組みだけでも進めておくことを強くおすすめします。

税制改正には常に注意を

税法は毎年のように改正されます。特に消費税法は、インボイス制度の導入など、近年大きな変更が続いています。

試験勉強中も、実務に入ってからも、最新の情報を常にキャッチアップするクセをつけておくことが、税理士として長く活躍するために不可欠です。

まとめ:今日、何をすればいいのか

フルタイムで働いていても、税理士は目指せます。

  • 3科目の合格でOK
  • 大学院で残りの科目を免除
  • 修士号も同時に取得できる
  • 登録までの道筋が明確

だからこそ、最初の一歩さえ踏み出せば、あとは6年という明確なゴールに向かって、着実に進んでいけます。

小さな行動が、あなたの未来を大きく動かします。

税理士になりたいと思っている社会人のあなたへ。

現実的な道は、ちゃんとあります。

そして、その道を選ぶかどうかは、今日のあなたの行動にかかっています。