AI時代に士業が生き残る条件とは?行政書士と税理士に共通する「相談される価値」の本質

AI時代に士業が生き残る条件とは?行政書士と税理士に共通する「相談される価値」の本質

はじめに:専門職はAIに代替されるのか?

2026年5月、読売新聞に掲載された行政書士・上田貴俊さんの記事を読んで、私は税理士として深く共感しました。

「AI時代だからこそ、人間が法律を扱う意味がより問われるようになっていくだろう」

この言葉は、税理士業界にもそのまま当てはまります。

AIの進化により、書類作成や数値処理といった業務は確実に自動化されていきます。しかし、それでもなお「人間にしかできない価値」があると、私は確信しています。

この記事では、行政書士と税理士という二つの士業に共通する「AI時代に求められる本質的な価値」について、私自身の経験と哲学を交えながら考察します。


1.士業の本質は「書類作成」ではなく「相談の起点」になること

行政書士も税理士も、外から見れば「書類を作る仕事」に見えるかもしれません。

しかし、実際に現場で求められているのは、書類そのものではなく「困ったときに誰に相談すればいいのかわからない」という不安を解消することです。

上田さんは記事の中で、こう語っています。

「法律の知識だけでなく、相手が不安なく手続きができるようにするためにコミュニケーション能力も大事になる」

私も全く同じ考えです。

税理士としての専門知識は、当然必要です。でも、それ以上に大切なのは「話しやすさ」や「距離の近さ」なんです。

経営者が求めているのは、税務署に提出する書類を作ってくれる人ではありません。
事業の悩み、資金繰りの不安、家族や従業員との関係——そんな「答えのない問い」に一緒に向き合ってくれる存在です。

だからこそ、私は「税理士とは、困ったときに一番最初に相談される存在である」という信念を持っています。

顧問契約とは、単なる業務契約ではなく「信頼の証」です。
その信頼を築くために、専門性と同じくらい、人間としての温かさや誠実さが問われると思っています。


2.AI時代に残るのは「人間対人間の関係性」

AIが進化すると、定型的な業務はどんどん自動化されます。
実際、税務ソフトやクラウド会計の精度は年々向上しており、決算書の作成や申告書の下書きは、以前よりもずっと効率化されています。

では、税理士の仕事はなくなるのでしょうか?

答えは「ノー」です。

なぜなら、AIにできないのは「依頼主の思いをくみ取ること」だからです。

上田さんも同じことを指摘しています。

「依頼主の思いをくみ取り、問題を解決することは、人間にしかできない」

まさにその通りです。

たとえば、決算書の数字を見て「今期は赤字だった」とAIが教えてくれたとします。
でも、その数字の背景にある社長の想いや、これからどう立て直すかという戦略は、AIには読み取れません。

数字を「重く受け止めすぎず、次に進むための指標として見る」という視点も、人間だからこそ持てるものです。

私は、決算書を社長に見せるとき、いつもこう伝えています。

「この数字は過去の結果です。大事なのは、ここから何を学んで、次にどう活かすかですよ」

こうした言葉をかけられるのは、社長の性格や事業の状況、これまでの経緯を知っているからです。
AIには、こうした「文脈」を理解することはできません。


3.専門家としての価値は「知識」ではなく「寄り添う姿勢」

上田さんは、予備校に通わず独学で行政書士の資格を取得し、Webマーケティングで顧客を獲得し、今では複数の事務所を経営されています。

この経歴が象徴しているのは、「資格があるから仕事がある」時代ではなくなったということです。

専門知識は前提条件であり、差別化要因ではありません。

では、何が差別化要因になるのか?

それは、「どれだけ相手に寄り添えるか」です。

私自身、フランクで自然体な語り口を大切にしています。
専門家らしい堅さよりも、親しみやすさを重視する。
難しいことを身近な言葉で伝える。
社長の意思は尊重しつつ、リスクはきちんと提示する。

こうした姿勢が、「あの人に聞いてみよう」と思ってもらえる関係性を築くのだと思います。

税理士も行政書士も、専門家である前に「人間」です。
人間対人間の信頼関係があってこそ、専門知識が活きるのです。


4.節税と経営強化は同じではない——キャッシュを残すことの重要性

税理士としてよく聞かれるのが、「節税したい」という相談です。

もちろん、節税は大切です。
正当でオーソドックスな方法で、状況に応じて行うべきだと考えています。

ただし、私がいつも伝えているのは、
「税金を減らすことと、会社を強くすることは同じではない」
ということです。

節税のために無理な経費を使ったり、キャッシュを減らしてしまっては本末転倒です。
大切なのは、会社にキャッシュを残し、小さく強い経営基盤を築くことです。

この視点も、AIには持てません。
なぜなら、AIは数字の最適化はできても、経営者の人生や事業の未来までは見通せないからです。


5.これからの士業に求められるのは「背中を押す力」

上田さんは、地元の狛江市に新しい事務所を開き、地域密着型のサービスを目指しているそうです。

これは、「相続に関する相談など個人の困りごとの解決に力を入れる」という方針の表れです。

私も同じように、税理士としての専門性を活かしながら、経営者の「よろず相談」に応えられる存在でありたいと思っています。

経営者は孤独です。
誰にも相談できない悩みを抱えながら、日々決断を迫られています。

そんなとき、「あの人なら話を聞いてくれる」「あの人なら一緒に考えてくれる」と思ってもらえる存在になること。

それが、AI時代における士業の本質的な価値だと思います。


まとめ:AI時代だからこそ、人間の価値が問われる

行政書士の上田さんが語った「AI時代だからこそ、人間が法律を扱う意味がより問われる」という言葉は、税理士にもそのまま当てはまります。

AIが進化すればするほど、私たちに求められるのは「専門知識」ではなく「人間力」です。

・困ったときに一番最初に相談される存在になること
・話しやすく、距離が近く、信頼できる関係を築くこと
・専門性を振りかざさず、相手に寄り添うこと
・社長の背中を押し、前に進む勇気を与えること

これからも、私は関わる人から「あの人に聞いてみよう」と思われる税理士でありたいと思います。

【読売新聞】 法律の専門知識を持ち、個人や企業が官公庁に提出する書類を作成したり、申請を代行したりするのが行政書士だ。体の不自由な人を病院や福祉施設まで送る介護…
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